大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長野地方裁判所 昭和42年(わ)120号 判決 1973年4月21日

本店所在地

長野県北安曇郡池田町大字池田二、八九九番地

勝家建設株式会社

(右代表者代表取締役勝家昭雄)

本籍

長野県東筑摩郡生坂村大字北隆郷一三一五三番-イ

住居

同県北安曇郡池田町大字池田二、八九九番地

会社員

勝家幸盛

明治三二年一二月四日生

右の者らに対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官伊藤実出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告勝家建設株式会社を罰金五〇〇万円に、

被告人勝家幸盛を懲役六月にそれぞれ処する。

但し、被告人勝家幸盛に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人等の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人勝家建設株式会社は、昭和二九年二月六日設立され土木建築等を業とするもの、被告人勝家幸盛は同会社の業務を統括しているものであるが、同人は同会社の業務に関し、法人税の一部を免れようと企て、会社正規の帳簿等に架空支出を計上し、八十二銀行池田支店等に多額の別途預金を設け、所得の一部を秘匿し、これらを正式の決算書から除外し、同社の法人税確定申告書を提出する不正の行為により、

第一、昭和四〇年二月二〇日、所轄大町税務署長に対し、同社の昭和三九年一月一日より同年一二月三一日迄の事業年度分の所得金額が一七、三五三、三四二円であって、この法人税額が六、四四四、一〇〇円であるのに、同事業年度における所得金額が六、八八七、九四一円でこれに対する法人税額二、四六七、四〇〇円である旨を記載した虚偽の法人税確定申告書を提出し、よって同事業年度の法人税三、九七六、七〇〇円を逋脱し、

第二、 昭和四一年二月二八日、前記税務署長に対し、同社の昭和四〇年一月一日より同年一二月三一日迄の事業年度分の所得金額が四四、六一二、三八四円であって、この法人税額が一六、三二六、四〇〇円であるのに同事業年度における所得金額が一一、七九三、八一四円でこれに対する法人税額四、一八三、七〇〇円である旨を記載した虚偽の法人税確定申告書を提出し、よって同事業年度の法人税一二、一四二、七〇〇円を逋脱し、

第三、昭和四二年二月二四日前記税務署長に対し、同社の昭和四一年一月一日から同年一二月三一日迄の事業年度分の所得金額が二八、五八二、四三四円であってこの法人税額九、七九三、七〇〇円であるのに、同事業年度における所得金額が六、七八五、九五二円でこれに対する法人税額二、一六五、〇六〇円である旨を記載した虚偽の法人税確定申告書を提出し、よって同事業年度の法人税七、六二八、六〇〇円を逋脱し

たものである。

(判示各事業年度における実際所得金額の算定については別紙第一乃至第三の修正貸借対照表、逋脱所得の内容については別紙第四ないし第六の逋脱所得の内容にそれぞれ記載のとおりである。)

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人勝家幸盛の検察官に対する供述調書及び同被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書七通

一、被告会社代表者勝家昭雄の検察官に対する供述調書及び同人に対する大蔵事務官の質問てん末書二通

一、第六回公判調書中、証人合津輝嘉、同高坂公二の各供述部分

一、勝野千弘、吉江武範、征矢野実、上篠秀一、丸山隆久の検察官に対する各供述調書

一、勝野千弘に対する大蔵事務官の昭和四二年三月三一日付、同年三月一一日付、同年五月二四日付、同年四月二一日付各質問てん末書抄本

一、勝野千弘に対する大蔵事務官の同年五月二七日付、同年五月一一日付各質問てん末書

一、勝野千弘作成の答申書(同年五月二三付)

一、太田徳重に対する大蔵事務官の質問てん末書(同年五月二四日付)

一、小林篤作成の同年三月一八日付証明書二通

一、近藤昭治作成の架空経費調査表

一、右同人作成の簿外前渡金調査表

一、押収にかかる小手帳四冊、経費帳一綴、決算書綴一綴、総勘定元帳一冊、金銭出納帳二冊、工事台帳一冊、重要書類二綴、手形受払帳二冊、支払明細書綴一綴、総勘定元帳一冊、済約束手形一綴、経費帳一綴、雑書類一綴、特別金利支払明細表集計表一綴、特利付予金メモ一枚、済定期予金記入帳三七枚、小手帳(第一生命)一冊(昭和四五年押第五九号の一乃至四、六乃至八、一一乃至一六、一九、二九乃至三二)

判示冒頭の事実につき

一、登記官吏作成の登記簿謄本

判示第一乃至第三の事実につき

一、宮田東海男他二名作成の「八十二銀行池田支店調査関係書類」

一、近藤昭治作成の簿外未払金調査表(昭和四二年六月五日付)

一、前田完治、原田幸彦、小山富司(昭和四二年五月一〇日付)、深井久男、中沢和男(二通)、飯田隆三、今井敏明、三浦君雄、斉藤政武、降旗一男、清水和夫、松原玄義、西沢秀夫、白沢忠生、斉藤信、猪原勝四郎、北条恵一郎、小林篤(同年五月二八日付)、小口暉雄作成の各答申書

一、山口誠次郎作成の証明書

一、猪原勝四郎作成の取引内容追加答申書

一、井口忠勇、勝家東司、中塚今朝一に対する大蔵事務官の質問てん末書

一、高木数能作成の個人収支計算書

判示第一及び第二の事実につき

一、勝野千弘に対する大蔵事務官の昭和四二年五月二五日付質問てん末書抄本

一、大日方いちのに対する大蔵事務官の質問てん末書

一、川上良一郎、内川重雄作成の各答申書

一、大町建設事務所長作成の回答書

一、押収にかかる工事台帳二冊、金銭出納帳一冊(前同押号の一七、一八)

判示第一の事実につき

一、畑進作成の証明書(昭和四〇年二月二〇日提出の法人税申告書に関するもの)

一、右同人作成の証明書(法人税更正決議書に関するもの)

一、小林篤作成の昭和四二年四月二一日付証明書及び、同年五月二五日付答申書

一、山内五郎、白鳥昭一、中山親雄、城取喜代十、松島俊行、小山富司(昭和四二年五月一〇日付)作成の各答申書

一、勝野千弘に対する大蔵事務官の昭和四二年四月二二日付質問てん末書抄本

一、押収にかかる普通預金通帳一冊、工事別経費補助ノート一〇冊(前同押号の五、九)

判示第二及び第三の事実につき

一、白浜豊和、薄井方次、窪田修、吉田俊、大山廣恵、吉江武範、田中茂作成の各答申書

一、勝野千弘(昭和四二年五月一二付)、勝家信夫、勝家守に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一、押収にかかる総勘定元帳二冊、仕入帳一冊、工事台帳一冊、金銭出納帳一冊、領収書綴五綴(前同押号の二〇乃至二五)

判示第二の事実につき

一、畑進作成の証明書(昭和四一年二月二八日提出の法人税申告書に関するもの)

一、近藤昭治作成の経費配分未成工事支出金調査表

一、右同人作成の勝家こくみ(勝家信夫に対する分)貸付金明細書

判示冒頭及び判示第三の事実につき

一、滝川浩治作成の証明書

一、矢口和夫作成の答申書及び供述書

判示第三の事実につき

一、畑進作成の証明書(昭和四二年二月二四日提出の法人税申告書に関するもの

一、関亭作成の証明書

一、小林篤(昭和四二年五月二五日付二通)、上篠隆雄、牛越正美、岡田和江、松沢文夫、吉江武範(同年三月三〇日付)作成の各答申書

一、平林一武作成の答申書及び供述書

一、平田喜代司、有賀久悦(二通)に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一、近藤昭治作成の通知預金及び簿外未成工事受入金調査表

一、押収にかかる仕入帳一冊、領収書 定期予金ズモ帳一冊(前同押号の二六乃至二八)

(法令の適用)

被告人勝家幸盛の判示第一の所為は法人税法(昭和四〇年法律第三四号)附則第一九条によりその改正前の法人税第四八条第一項(第一八条第一項)に、判示第二、第三の所為は法人税法第一五九条第一項(第七四条第一項)に各該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなした刑期の範囲内で被告人勝家幸盛を懲役六月に処し、被告人勝家建設株式会社については、その従業者である被告人勝家幸盛が被告会社の業務に関し判示各所為をなしたのであるから判示第一については前記改正前の法人税法第五一条第一項判示第二、第三については法人税法第一六四条第一項により、判示第一については前記改前正の法人税法第四八条第一項、判示第二、第三については法人税第一五九条第一項各所定の罰金刑を科すべきところ、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告勝家建設株式会社を罰金五〇〇万円に処し、被告人勝家幸盛に対しては情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文第一八二条により全部被告人等の連帯負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中村護 裁判官 荒木恒平 裁判官村上光鵄は転任のため署名押印することができない。)

別紙第一 修正貸借対照表

39年度(第一期) 昭和39年12月31日

修正貸借対照表

40年度(第二期) 昭和40年12月31日

別紙3 修正貸借対照表

41年度(第三期) 昭和41年12月31日

別紙第四 逋脱所得の内容

ANo1 (昭和39年度)

別紙第5

逋脱所得の内容

(昭和40年度)

別紙第六 逋脱所得の内容

昭和41年度

脱税額計算書

39年度

40年度

41年度

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例